小学館の児童雑誌
【補足】ヨーロッパ、アフリカ、アジアと旅行して、今度は南米に行ってみたいと思っていた頃、大学でスタディツアーの募集があるのを知った。2011年2月、日系人社会を学び、大自然に触れるという名目で、学生約10人やスタッフとアルゼンチンを2週間かけて巡った。
日系人が、現地で生まれ育った2世、3世の子どもに(一度も行ったことのない)日本について伝えているのか、という点に興味があったので、いろいろ聞いてみたのだけど、 結構多かったのが「小学館の児童雑誌を日本から取り寄せて読ませる」という方法だった。
日系人が、現地で生まれ育った2世、3世の子どもに(一度も行ったことのない)日本について伝えているのか、という点に興味があったので、いろいろ聞いてみたのだけど、 結構多かったのが「小学館の児童雑誌を日本から取り寄せて読ませる」という方法だった。
移住当初(1950年代)は日本に残った親戚や知り合いにお願いして郵送してもらっていたのが、 ブエノスアイレスなどに日系の書店が出来てからはそこで注文するようになったらしい。いずれにせよ船便で2ヵ月かかるのだけど、日系人は「その月の雑誌が読めた」と言っていた。
ここに出版社のおもしろい工夫があった。考えてみると日本の雑誌は発行月が2ヵ月早い。3月号が1月末に出るみたいな感じで。あれは戦前、満蒙や南洋諸島など、船で運ぶのに時間が掛かった地域への配慮が元らしい。そういうわけで、現在でも東京発売日は1~2ヵ月早く設定されているのだとか。
ある日系1世は密林か畑に囲まれた家庭で、「小学何年生」の特集やマンガで日本を学んだらしい。彼らの子ども時代の日本の印象は「東京タワー」「新幹線」「オリンピック」だったりするが、そもそもそれ以前に、 「家の前には道路があって、垣根があって、学校にはランドセル背負って行く、と雑誌が教えてくれた」という。
印象的だったのは「海の色」について。ある高齢の日系1世は雑誌「小学1年生」で、海は青色と学んだらしい。その人は幼少期に内陸部に移住して、一度も海を見たことがなかったそうだ。ある機会にアルゼンチンの沿岸部に行った際(河口付近だったこともあり)海は赤茶色で、「そんな馬鹿な」と思ったらしい。それほど、雑誌が与えた情報は強かったのだろうとも思う。
ちなみに日本語学校(3世、4世向けに日本文化などを教える民間のスクール)も訪問したのだけど、 本棚に古い「小学○年生」「りぼん」「なかよし」などが並べられていた。古いのは70年代ぐらいから新しいと90年代ぐらいまで置いてある(レッツ&ゴーが載ってた)。ただ95年ぐらいを境に雑誌が途切れているのが気になった。
それについて2世の親に聞いてみたのだが、 「近年ここ(学校)の生徒の日本語理解力が落ちていて、もう読めないんです」とのことだった。日本語を話す1世(祖父母)が亡くなり、2世以降がスペイン語だけで生活しているから、だそう。
※日本語学校に貼られていた「家で日本語で話しましょう」のポスター。
ある家庭で、高校生の長男が、小学8年生の三男の卒業文集を読んで、 「母さん、何ですか、この文集は!僕たちの頃の3年生のレベルじゃないですか!」 と言い放ったという話も伺ったので、理解力の衰えはそれほど急速なのだと思われる。
すみません、オチが見つかりません。
個人的には、日系社会が現地に溶け込むことで、日本の児童雑誌が役目を終えるというのが、 小学館の児童雑誌(小学五年生、六年生等々)の休刊が近年相次ぐ事実と連なって見えた。発行部数的にどれだけ影響あるのか分からないけども。
ただ小学館の児童雑誌って、国内では購読部数が減っているにせよ、 例えば、海外に勤務する日本企業の駐在員の子弟は、今もそういった媒体を必要としているのではないかと思う。もちろん、ボランティアで発行してるわけじゃないし、やはり部数が大切なんだろうけど。なんかいろいろ複雑な気持ちになったり、小学館に手紙でも書いてみようかしら 。
ちなみに参考に小学四年生2011年3月号の特集を調べてみたが、
・小学5年生で習う漢字ポスター
・あの動物の飼い方
・人気ブランドでお洒落高学年デビュー!
・春ディズニーは<新>づくし!
・草食小学生のための野菜ずかん
・12球団ジュニアトーナメント
・「はやぶさ」からのおくりもの
・ポケモンBWバトル攻略!
・バレンタインデーチョコレシピ
・「視力」のこと、お見通し!
・10才の心とからだレッスン
・コミック「塔の上のラプンツェル」
・とびだせ!テクあり文ぼう具!
地味に読んでみたくなった。
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