ハンカチ王子似の
チャイは相変わらず美味しい。ただ、「あの乗客は買ってくれる」という情報が乗務員内で共有されてしまったのか、この後、数時間おきにチャイ売りや弁当売りが自分のベッドの前で立ち止まるようになってしまった。「チャイ売りチャイ売れずチャイチャイ売り歩く」と、日本人にしか分からない由無し事を浮かべつつ、またひと眠りした。
列車は、(12時間遅れで出発して)昼過ぎにはガヤーに到着する予定だったが、(12時間遅れで出発して)さらに遅れているらしく、(12時間遅れで出発して)夕方になっても着かなかった。モヤモヤしていると、今度は下のベッドにいた斉藤祐樹(ハンカチ王子)を少し野生化したような風貌の男が話しかけてきた。
訛りのある英語によると、チベット出身らしく、紛争で父母がインドに移住し、本人はインド国籍らしい。熱烈な仏教信者で、バラナシの大学で学んでいるらしいところまでは聞き取れた。「お前も仏教徒なのか?」というようなことを聞かれた。安易に「Me too」と答えてしまうとチベット斉藤に申し訳ないので、数秒考えてから「Japanese Buddhist and Shintonist」と答えた。
「日本人はどれぐらいの頻度で寺に行くのか」などと質問され、自分が分かる範囲で答えているうちに、チベット斉藤の何かに火がついたらしく、仏教の素晴らしさについてガヤーに到着するまでの残り数時間、ひたすら語られた。「仏教はインドで生まれ、各地に伝播していった」「伝播した仏教のルーツを見つめる点で、これから向かうガヤーには意味があるんだ」等々。相手には失礼だが、「このまま聞き続けると洗脳されるんじゃなかろうか」とだんだん不安になってきた。
ガヤー駅に到着したのは午後8時すぎ。まだ話足りなそうなチベット斉藤に「Goodbye」と伝えて素早く列車を降りたものの、駅前はすでに暗く、予約しているホテルまで一人でトゥクトゥクに乗るには不安があった。一緒に向かえるヨーロッパ人やアジア人が見つからなかったら、このまま朝まで外国人待合室で過ごそうか。悩みつつ駅前でウロウロしていると、「お前どこに行ってたんだ」というようなことを言いながら、あのチベット斉藤が近づいてきた。
この男がまっとうな人間かどうか判断がつかなかったが、「熱烈な仏教徒である」という1点だけ信じ、「ホテルまで一人で行くことに不安を感じている」と伝えると、「お前をホテルで下ろしてから、俺は自分のホテルに向かうからな」というようなことを言われ、予約していたホテルまで連れて行ってくれた。
この男がまっとうな人間かどうか判断がつかなかったが、「熱烈な仏教徒である」という1点だけ信じ、「ホテルまで一人で行くことに不安を感じている」と伝えると、「お前をホテルで下ろしてから、俺は自分のホテルに向かうからな」というようなことを言われ、予約していたホテルまで連れて行ってくれた。
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